ある人から「動物好きに悪い人はいない。」なんて言葉を聞きました。なんとなく頷きたくなる一方で、「実際のところ、心理学や犯罪心理学ではどう捉えられているのだろう?」と疑問に思う出来事もあったので、人間が動物に向ける態度や関わり方と、その人のパーソナリティや共感性との関係について、実際の研究などで何が示されているのかを少し調べてみたのであります。
ペットへの愛着と「共感性・利他性」に関する研究
まずは、「動物を大切にする人は優しい」という側面を支持する研究です。
Jhon Marc V. Fanerらの研究(Pet attachment and prosocial attitude toward humans: the mediating role of empathy to animals)などでは、ペットへの愛着の度合いと、動物に対する共感、そして人間社会における利他的な態関連が統計的に分析されており、ペットへ強い愛着を持つ人は、他者の痛みに対する感受性が高く、それが人間社会における利他的な行動や社会的責任感の向上にもつながる傾向があることが示されているそうです。
犯罪心理学における「マクドナルド・トライアド」と「ダークトライアド」
次に、「動物に対する態度」のネガティブな側面についての犯罪心理学やパーソナリティ研究です。
精神科医John Marshall Macdonaldが1963年に提唱した臨床的仮説(The threat to kill)では、幼少期や青年期における「動物への残酷な行為」が、将来的な反社会的人格や暴力犯罪の強い予測因子のひとつとして挙げられていたり(マクドナルド・トライアド)、Phil Kavanaghらの研究(The Dark Triad and animal cruelty: Dark personalities, dark attitudes, and dark behaviors)をはじめとするパーソナリティ心理学では、ナルシシズム、マキャヴェリアリズム、サイコパシーといった反社会的なパーソナリティ特性(ダークトライアド)が高い人ほど、動物に対して冷淡であり、虐待的傾向や攻撃性を示しやすいことが実証されているそうです。動物が好きではない人が全員悪人というわけではありませんが、「人間以外の生き物の痛みに対して極端に無関心である、あるいは傷つける」という行動は、その人の根底にある共感能力の著しい欠如やパーソナリティの歪みを映し出す重要なサインになり得るとのこと。
「人間不信」や「心理的避難場所」としての動物好き
別の視点として、動物と人間の関係性を「人間関係の代償や避難場所」として捉える心理学的アプローチもあるようです。
Lawrence A. Kurdekの研究(Pet Dogs as Attachment Figures for Adult Owners)などでは、ペットが人間にとっての「愛着対象」として機能し、人間関係で傷ついたり拒絶されたりした際の不安を和らげる役割を果たすことが示されています。動物は批判や複雑な駆け引きをしないため、「心理的避難場所」として機能しやすいと説明されているようです。
動物への態度は、私たちの心を映す鏡
整理すると、「動物好きに悪い人はいない」という俗説の裏側には、次のような多面的な真実が見えてきます。
- ペットへの愛着や動物への共感は、豊かな共感性や他者への思いやりを育む基盤になり得る。
- 一方で、命に対する共感の著しい欠如(動物への冷淡さや残酷さ)は、反社会的なパーソナリティ傾向の重要なサインとなり得る。
- 動物を深く愛する背景には、純粋な優しさだけでなく、人間関係からのストレスや心理的逃避という側面が隠れていることもある。
人間のパーソナリティは単純な二分法で測れるものではないということであります。しかし、「動物への態度」という一つの鏡を通してみると、私たちの心の仕組みや他者への共感のあり方がとてもよく映し出されていると言えそうです。勉強になりました。

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