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「人的資源」に成り下がらないために

  「 AI時代に「無駄」を愛する勇気 」を書いて、哲学者ハイデガーが警告した「ゲシュテル(総駆り立て体制)」にとても興味が湧いたので、ハイデガーの「技術」をめぐる代表的な三つの講演が収録された「 技術とは何だろうか 」を手に取ってみました。 悩めるエンジニアは哲学の素養はほぼ皆無なので理解するのはたいへん難しかったのですが、なんとか少しだけ理解できた内容を、悩めるエンジニアなりにまとめてみました。 技術の本質は「道具」ではない 私たちは通常、技術を「目的を達成するための手段」と定義します。しかしハイデガーは、その背後にある「世界の現れ方」に注目しました。 本来技術とは、隠れていたものを明るみに出す「顕現」という営みでした。しかし、現代の技術はかつての職人芸とは決定的に異なり、自然を「資源」として挑発し、いつでも引き出せる「在庫」として管理しようとします。 ハイデガーは、この世界を「資源の集まり」としてしか見られなくなる枠組みを「ゲシュテル(総駆り立て)」と呼び、これこそが現代技術の本質であると結論づけています。 最大の危険は「人間も資源になる」こと 技術が支配する世界では、山は「木材」に、川は「エネルギー源」に見えるようになります。この「計算的思考」が極まると、ついに人間自身も「人的資源」という名の在庫として扱われるようになります。 ハイデガーが危惧したのは、技術そのものの進歩ではなく、この「効率的な資源」という尺度以外の価値観が、私たちの世界から完全に消え去ってしまうことなのであります。 効率へのささやかな抵抗 ハイデガーはこの「効率の檻(ゲシュテル)」から逃れる道として「芸術」と「思索」を挙げました。 役に立つか、で判断しない : 一輪の花を描いた絵画は、それを燃料や肥料として見るのではなく、その花がそこに「ある」ことの美しさをそのままに示します。 支配せず、寄り添う : 現代の技術が自然から「無理やり搾り出す」のに対し、芸術は「素材が自ら形を成す」のを手助けする、自然に寄り添った営みです。 「計算」をやめて「想起」する : 「計算的思考」から離れ、存在の意味を深く噛み締める「思索」は、私たちの内側に、効率とは無関係な「自由な空間」を作り出します。 効率や数値がすべてを決定する現代だからこそ、あえて「何の役にも立たない」とされる芸術的な時間に...
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携帯性より安定感?小型トラックボールから「垂直トラックボール」に乗り換えた理由

以前ご紹介した「 サンワダイレクトトラックボールマウスnino 」は、持ち運びには最高の相棒でした。しかし、手に馴染んだかと言えば、少し小ぶりすぎたかもしれません。 しばらく使い込むうちに、ボールにホコリが溜まると動きに引っかかりが生じ、その抵抗で軽量な本体がふわりと浮いてしまう・・・。致命的ではないものの、この「地味なストレス」が積み重なっていきました。 そんな折、Amazonギフト券をいただいたこともあり、以前から気になっていた「 サンワサプライMA-BTTB179BK 」への乗り換えを決意。悩めるエンジニアの外せない条件である「プラスチック外装」「Bluetoothで3台以上のマルチペアリング」を満たす一台です。 特筆すべきは、そのフォルム。巷にある「20度くらいの角度調整」なんて生ぬるいと言わんばかりの、ほぼ「垂直」な形状です。一瞬「置き方を間違えたか?」と疑うほどの角度ですが、握ってみると驚くほど手首が自然な位置に収まり、謳い文句通り確かに楽なのです。 しっかりとしたサイズと重量感があるため、操作中に本体が浮く心配もありません。一日使い倒してみましたが、今のところ不満はゼロ。ようやく納得のいく一品に出会えたかもしれません。 今ならAmazonで42%OFFと、驚くほどお得になっています(執筆時点)。手首の疲れやマウスの安定感に悩んでいる方は、この「垂直の世界」を試してみる価値アリですよ!

ソフトウェア開発に関して個人的に有益な情報

ソフトウェア開発に関して個人的に有益と思った論文・資料等を列挙します。随時、追加・更新していく予定です。

AIは「意味」を理解するのか?「記号創発システム論」から見えた次世代AIの姿

前回の「  AIの「嘘」と「電力大食い」の正体は?「言語の本質」 」で紹介した「 記号創発システム論ー来るべきAI共生社会の「意味」理解にむけて 」を読んでみました。 正直に言いましょう・・・、 難しい! あまりの難解さに挫けそうになりましたが、「 記号創発スタディーノート 」という解説サイトを道しるべに、なんとか少しだけ理解できた内容を、悩めるエンジニアなりにまとめてみたいと思います。 「記号創発問題」とは何か? 私たちが普段何気なく使っている言葉(記号)。これがいかにして生まれ、共有されるのかを探るのが「記号創発問題」です。「記号創発システム論」では、これを2つの視点から解き明かそうとしています。 個人のレベル(ミクロ): 赤ちゃんが光や音から「ママ」という言葉の意味を学習するように、ロボットがいかにして「内的表象(頭の中のイメージ)」を作り上げるか。 社会のレベル(マクロ): 個人がバラバラに意味を決めるのではなく、相互作用を通じて社会全体で共有される「言語システム(地図やルールなど)」がいかに形作られるか。 「つくることで分かる」という挑戦 「記号創発システム論」の重要なポイントは、単なる哲学ではなく、「数学やロボット実装で証明しよう」としている点です。 環境、個人、社会が連動して意味が生まれるループ構造(ミクロ・マクロ・ループ)を、統計的機械学習などの数学的手法で定式化し、実際にロボットに動かしてみる。「構成論的アプローチ」による実証実験という点です。 なぜ今、この視点が必要なのか? 前回の「言語の本質」の紹介で「記号接地問題」という問題が出てきましたが、テキストを学習している大規模言語モデルのようなAIは、「人間のデータ」を介して間接的に世界と繋がっている(接地している)と言えます。だから、私たちが問うべきは「既存の記号をどう教えるか」という静的な問題ではなく、「いかにして共に記号を作り出し、そのプロセスに参加するか」という動的な問題に移っているということなのであります。 最近、フィジカルAI(身体性を持つAI)の研究がこれほどまでに熱を帯びている理由が、ようやく腑に落ちた気がします。 かなり難しい内容ですが、AIの利用が当たり前となるこれからの若手にぜひ手に取ってもらいたいと思いました。 しばらくしてからまた読み直そうと思います。

悪に染まる準備はいいか?名作「ダンジョンキーパー」を現代に蘇らせる

「 Exult 」に引き続き、リメイクプロジェクトのご紹介。「 ポピュラス 」の生みの親である ピーター・モリニュー 氏が放った伝説の一手、「 Dungeon Keeper 」を現代の環境で快適に遊べるようにした「 KeeperFX 」であります。 勇者諸君、そろそろ正義の味方を演じるのに疲れただろう。我が帝国に寝返って、悪の世界を心ゆくまで楽しんではどうかね?なに?「それはできない」だって?そんなに世間の目が気になるのかい、ならば仕方あるまい。我が愛する手下たちに勇者退治を命じるとしよう。正義の仮面をかぶった"偽善者ども"に、悪の力を思い知らせてやる! 本作は、勇者として世界を救うのではなく、悪の「ダンジョンキーパー」としてクリーチャーを指揮するシミュレーションゲームです。襲来する勇者や敵対勢力を罠と魔法で返り討ちにする斬新なシステムは、今なお色褪せません。 単なるリメイクではなく、高解像度対応、音声も含めた完全日本語化、そして「Level Script」を活用すれば自分だけの地獄(ステージ)を構築もできるなど、かなりの進化を遂げています。 インストールは「 公式ドキュメント 」に従えばスムーズですが、基本的にはオリジナル版のデータを用意するだけでOK。大きなトラブルもなく、すぐに「悪の道」へ足を踏み入れることができました。 悩めるエンジニアも少し遊んで、自分だけのレベル作成に挑戦してみたいと思います。

伝説のRPGを現代に!「ウルティマⅦ」リメイクプロジェクト「Exult」

伝説のRPG制作者、ロード・ブリティッシュこと リチャード・ギャリオット 氏。彼が生み出した「 ウルティマ 」シリーズが、後の「ドラゴンクエスト」など多くのコンピュータRPGに多大な影響を与えたことは言うまでもありません。 そんなシリーズの中でも、史上最高の没入感と評される名作「ウルティマⅦ」を、現代のPC環境で快適に動作させるリメイクプロジェクト「 Exult 」をご存知でしょうか。 今回は、macOS環境でExultをセットアップする際、公式ドキュメントの手順通りではうまくいかなかった「落とし穴」とその解決策をシェアします。 公式ドキュメントでは、ゲームデータのコピーについて以下のように指示されています。 sudo mkdir -p "/Library/Application Support/Exult/blackgate" sudo mkdir -p "/Library/Application Support/Exult/serpentisle" sudo cp -p -R "/Applications/Ultima VII™  - The Black Gate + The Forge of Virtue.app/Contents/Resources/game/STATIC" "/Library/Application Support/Exult/blackgate" sudo cp -p -R "/Applications/Ultima VII™  - Serpent Isle + The Silver Seed.app/Contents/Resources/game/STATIC" "/Library/Application Support/Exult/serpentisle" しかし、私の環境で試したところ、これでは正しく認識されませんでした。正解は、「STATIC」フォルダ単体ではなく、「game」フォルダ丸ごとをコピーすることです。 sudo mkdir -p "/Library/Application Support/Exult/blackgate" sudo mkdir -p "/Library...

再始動したマーケットで出会った「養蜂道具」

先週末、茨城県の古河公方公園で開催された「 古河蚤の市 」へ行ってきました。かつて「トロマル」として愛されていた巨大アンティークマーケットが、装いも新たに再スタートした注目イベントなのであります。 広い園内を歩き回り、まだ見ぬ逸品を探す中で出会ったのが、こちらの「遠心分離機」。 なんとはちみつの巣枠から蜜を取り出すための本格的な道具なんです! 先日紹介した「 HAOTO Bee farm 」のオーナーさんに連絡したところ、ぜひ代理購入して欲しいとのことで、購入してきました。「HAOTO Bee farm」のオーナーさんにとても喜んでいただけたので、足を運んだかいがありました。 他にも、実用的なアンティークから「これ何に使うの?」という不思議な骨董品まで、味のある品々が並んでいて、歩いているだけでワクワクする空間でした。 美しい緑に囲まれた公園での宝探しは、心のリフレッシュに最適です。次回の開催情報をチェックして、ぜひ皆さんも「自分だけの逸品」を探しに足を運んでみてください。

上野で出会う北欧の光、東京都美術館「スウェーデン絵画展」

鯖料理専門店「 鯖匠 極(さばしょう きわみ) 」さんで至福のランチを楽しんだ後は「 東京都美術館 」へ。今回のお目当ては、「 開館100周年記念事業 」の第一弾として開催されている「 スウェーデン絵画 北欧の光、日常の輝き 」であります。 特に印象に残ったのが、 アーンシュト・ヨーセフソン の「 スペインの鍛冶屋 」。撮影禁止フロアだったので写真は撮れなかったのですが、逞しい腕を組み、白い歯を見せて笑う人物の姿には、理屈抜きに惹きつけられる人間味があります。日々PCと向き合う悩めるエンジニアにとって、その生命力あふれる描写はどこか新鮮で、元気をもらえるものでした。 もう一つは、こちらの写真の エウシェーン・ヤーンソン の「5月の夜」。最初は抽象的に見えましたが、じっと眺めていると、静かな海と埠頭、そして遠くに揺れる街の灯が浮かび上がってきます。訪れたことのない北欧の景色なのに、なぜか心の奥底に眠る「懐かしさ」を呼び起こされる不思議な作品でありました。 スウェーデン国立美術館の全面協力によるこの展示は、4月12日まで。スウェーデン絵画に触れる機会は日本ではまだ珍しいかと思います。会期終了が迫っていますので、北欧の美しい光に癒やされたい方は、ぜひお早めに足を運んでみてください。

皇居の桜と鯖の極み!「鯖匠 極」で体験する感動の5段階ひつまぶし

皇居で美しい桜を堪能したあと、ずっと気になっていた鯖料理専門店「 鯖匠 極 (さばしょう きわみ)」さんへ足を運びました。 運ばれてきた盆を見て驚き!昆布炊きのご飯の上に、鯖の半身がドーンと鎮座しています。季節柄、桜の花びらが添えられている粋な演出に、食べる前から心が躍ります。散策でお腹はペコペコ。すぐにでもかき込みたいところですが、ここには「5つの至福」を味わうためのお作法がありました。 一杯目: そのまま。鯖本来の脂の旨味と昆布ご飯の相性を堪能。 二杯目: 薬味とゴマで。香りが引き立ち、一気に食欲が加速します。 三杯目: 鯛出汁と山葵・沢庵でお茶漬けに。出汁の深みが体に染み渡ります。 四杯目:  「追い飯」を頼み、鯖のなめろうで「なめろうさばめし」。 五杯目: 仕上げの「追い出汁」。鯖へしこと有馬山椒で、ピリッと締める。 驚いたのは、追い飯と追い出汁がそれぞれ一杯無料というサービス!これだけ贅沢に鯖を楽しみ尽くせて、お腹も心も大満足です。 妻も娘たちも「また来たいね」と大喜び。秋の「乾通り一般公開」の際も、再訪確定なのであります。皇居周辺でのランチに迷ったら、ぜひこの「鯖の波」に飲まれてみてください!

都会のオアシスで春を愛でる、皇居・乾通りから千鳥ヶ淵へ

先週末、春の恒例行事である皇居の「乾通り一般公開」に足を運んできました。普段は入ることのできない「坂下門」から場内へ。門をくぐる際の凛とした空気感には、背筋が伸びる思いがします。 歴史の重みを感じさせる石垣や美しく手入れされた木々の向こうに、近代的な高層ビル群が顔をのぞかせる。この「江戸と令和が共存する不思議な景色」こそ、年に2回しか味わえない、この場所の大きな魅力だと感じましたのであります。 乾門を抜けた後は、そのまま歩いて「千鳥ヶ淵」へ。約230本の桜が咲き誇る光景は圧巻の一言です。非常に賑わっていましたが、一方で少し気になるニュースも目にしました。先日、千鳥ヶ淵や砧公園で桜の木の倒木があったそうです。これからお出かけを予定されている方は、頭上や足元に十分注意しながら、安全に春の散策を楽しんでください。 皇居の自然が見せてくれる四季折々の表情。今度は紅葉が美しい秋に、また戻ってきたいと思います。