山形浩生氏の「これは驚いた。言語と音楽(そして踊り)についての、コロンブスの卵のような理論だ」という書評が目に入り、「<脳と文明>の暗号」を手に取ってみました。人だけ突然、やたらに複雑な言語を駆使できるようになる。言語とは何なのか?とても不思議ですね。興味深いテーマであります。
言語というのは、基本は自然の音の模倣になっており、その自然の音に対する反応機構を転用することで発達してきたのではないか?というのが本書の仮説であります。本書の終章に出てくる例えが分かりやすいでしょうか。飼い猫は自分のことを野生の猫だと思っていて、野生の猫と同じように振る舞いますが、ツナとトイレ砂という大好物の小さな魚や排泄物を埋めるのに使う柔らかい土を模したもの、猫の本能を転用するものを用意することで、飼い猫たらしめる。つまり、自然という環境、自然を模した文化が私たち人を人たらしめていると。
人だけ突然という疑問には答えきれていないような気がしますが、言語というのは、人間で突然発生した、完全に生得的な能力という仮説よりは個人的には納得できるように思いました。「裸のランチ」などの著作で知られるウィリアム・バロウズは、「言語は宇宙から飛来したウイルスである」と語っていました。「カットアップ」などの手法で、ウイルスである言語の支配から逃れようとしたと言われています。「宇宙由来の言語ウイルス」観は世迷い事なのか?否定はできないほどまだまだ分かららないことが多いテーマかと思います。
新しい仮説、既存の仮説の発展を楽しみにしたいと思ったのでありました。
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